なぜフロートテレビボードの全国販売を決意したのか

フロートテレビボードの全国販売を決意したのは誰もが等しく手に入れられるようにしたかったから。
つまり「縛り」を無くしたかったからです。

目次

フロートテレビボードはなぜ生まれたか

オーダー家具の設計をしている中で、いつもしっくりとこなかったのが
リビングのテレビボードの設計でした。

どんなにシンプルに設計しても引渡し後の様子を見ると
コンセントに繋がれたコードや機器類が雑多に見えるからです。

そしてコンセント周りのコードを隠すようにボックスや観葉植物まで置くようになり
ますますリビングを狭く感じさせてしまいます。

ですからいつもこれをどうにかできないかと感じ続けていたのですが
重いテレビボードであるため浮かそうなんて思うこともなかったのです。

固定観念を覆そうと思ってデザインしたら

デザインの発想に詰まったら、そこはもう固定観念を覆して考えるしかありませんでした。
つまり実現できないことでも構わずデザインをしてみたのです。

そうすると真っ先に思い浮かんだのは
「テレビボードは床を狭くするから浮かせればいいんだ」
ということでした。

そうなると次にはコンセントを見せなくすることです。

これは簡単でした。テレビボードの内部に収納すれば良いだけです。

このように考え始めたらテレビボードを浮かせるメリットがいかに多いかと感じたので
これは何としても実現しなくてはと決意したのです。

なんとなく思うことと、決意することはまったく違います。

決意すると行動に移すようになるからです。

木(モク)にこだわらない

家具設計を長く続けていると、何でも木工でできてしまうという思い込みがありました。
金物を使うこともどこか邪道と考えていたのかもしれません。

ですがこの浮いているテレビボードを開発するには木(モク)以外のものも
取り入れるしかありませんでした。

木(モク)以外のものとなるともう鉄しかありません。

するとスチール階段の設計と施工管理の経験が頭に浮かび、
「これを応用できないか」と思いすぐに鉄骨屋さんの社長に会いにいくことにしました。

鉄工場の社長に相談を持ちかける

スチール階段の相談を何度もしている社長に、
「別な相談があるので知恵を貸してほしい」と連絡して訪問したところ、
「なになに」と多少にやけて話を聞いていた社長でしたが、

「テレビボードを浮かせたいんだ」と言った瞬間、表情が濁りはじめ、
「できるだろうか」と言ったものの、

ハイブリッドの設計プランを説明すると面白さと可能性に気がついたらしく
いつしか夢中な表情になっていき、いろいろなアドバイスをくれました。

これで浮かせることができると確信したので、
あとはデザインを整えるだけとなりましたが
これには時間はかかりません。

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取引のあるハウスメーカーのモデルハウスで試すことに

フロートテレビボード開発時は浮かせて付けなくてはいけないため建築工事で壁を補強し、
電源の位置なども行う必要もありました。

ですからそれができるハウスメーカーや工務店を通してお客様にお届けしていましたが、
それはそのハウスメーカーや工務店のお客様に限られるというということも意味していました。

そして「浮いているテレビボード」の施工例がやがて増えていく内に、
さまざまなエリアからも希望されるようになっていったのですが、
建築工事が不可欠だという理由で自分の管理できるエリア以外の方のご希望は
避けざるを得ませんでした。

ましてハウスメーカーや工務店からのお願いという形となっているため
お客様には流通経費も負担していただくことになります。

そこで、どうしたら完全オーダーのテレビボードを希望するお客様に
流通経費がかからない形でお届けできるだろうかと考え続けることになりました。

普通の置き式の家具なら直販すれば良いのですが、
建築工事が必要なフロートテレビボードはそうはいきません。

施主支給品としてお願いすることにたどり着いた

日に日にフロートテレビボードを誰もが等しく手に入れられるようにしたいという
思いが強くなっていき、常に「どうしたら」「どうしたら」と考え続け、
ついには「完璧を求めるからダメなんだ」、「ダメもとでもやってみよう」という
結論に至ったのです。

そこで建築業者がお客様の望みを叶えるべく日夜努力を積み重ねていることを知っているので
施主のためにご協力してもらおうと考えました。

実は施主がお持ちの家具、もしくは購入予定の家具の設置は
「施主支給品」と言って、それを取り付けさせていただくことはハウスメーカーや工務店では
不文律(暗黙の決まりごと)となっていました。

今ではそれもオプションとして扱うところもありますが
「やらせていただく」という姿勢を持っているということには変わりません。

耐久性と品質の良さが求められる

「施主支給品」と言えば、どこでも施工してくれるのかと言えばそうではありません。
品質の不明なもの、安全性に疑問を持たれるものであった場合は断られます。

まして浮いているテレビボードなんて見たこともないのが普通ですから
そんな危険なものは当社では扱えないと言われることは目に見えます。

ですが、このフロートテレビボードはすでに10年以上も前に発表していたので
実績という点では申し分ありません。

ですが、品質を考えたときに、
当時納めていたテレビボードは確かに綺麗なものでしたが
一定期間が経つと傷が増え、色も変化するなど経年劣化は避けられないものだったので
全国にお届けするフロートテレビボードは
メンテナンスを必要としない耐久性のある仕上げ材料にすることにしました。
それがメラミン化粧板です。

仕上げをメラミン化粧板にした理由は「練り付けベニヤ」にも欠点があるから

一般的なオーダー家具は家のフロアーの色に合わせるということが多いため
テレビボードの仕上げも天然木材を薄くスライスして貼った「練り付けベニヤ」として
塗装仕上げとしているものが一般的なのですが、

この「練り付けベニヤ」にも欠点があるということはあまり知られていません。

では「練り付けベニヤ」仕様の家具の欠点とは何でしょうか、

それは傷に弱いということです。
さらに言うと、傷に強くする方法があるのですが、それを一般の人には見抜けないところに
作り手の誠意のなさを感じています。

そもそも設計している人でさえもそこを理解しているかどうかという疑問を抱いたことも
少なくありません。

さらに塗装仕上げについても強度に関わるので単純にウレタン仕上げだから
丈夫だというわけではありません。

さらにこれはあまり知られてはいませんが清掃道具の中に塗装の色が抜けてくる成分を含んでいることには
驚いたことがあります。

これは偶然に発見したのですが、
家具の納品後に美装屋さんが入ったのですが、
清掃道具をカウンターに置き忘れていったのです。

その翌日忘れた清掃道具をカウンターから取ったら塗装の色が抜けていたということです。

このようなことはめったにあることではありませんが、
塗装面は摩耗にも弱く、化学成分を含む布や、研磨剤が入っているスプレーを使ったりすることは
少なくないということを考えると家具を綺麗なまま保つということは意外に難しいものなのです。

一般的な家具ならば、
経年劣化すれば取り替えれば済むのですが
フロートテレビボードは壁にしっかり固定するものなので
ほぼ取替は無理といっても良いでしょう。

家具を浮かせる手法として壁に埋め込む方法がありますが
これはほほ取替は無理です。

私はそのことも考えて取り替えもしやすい構造としています。

後付け可能なフロートテレビボード

取替も可能なフロートテレビボードとしたのは
後付け可能なフロートテレビボードにするという目的もあったからです。

というのは家の完成間近になってから
フロートテレビボードを付けたいと希望されるお客様が少なくなかったからです。

ですから
ご依頼があってから平面図をいただいて下地の位置を考えて
設計することにより後付けも可能となっています。

メラミンの仕上げは汚いのか

これは最大の悩み事でした。

建材の種類も豊富で耐久性にも優れているメラミンとするか、
仕上がりがとにかく綺麗な「練り付けベニヤ」とするかに迷いました。

ご希望通りにすれば良い話ですが、
「練り付けベニヤ」のメンテナンスのことを考えると
ご自分で何とかするというお客様以外には送れないと思っているところです。

さらに「練り付けベニヤ」とした場合は木目の違いまでは選べないからです。
木目の違いは柾目、板目、中木目などありますが、
厄介なのが小さな節が入ることもあった時です。

「天然なのでむしろ良い」という人や、
「小さな汚れが気になる」という人がいるからです。

そんなことで家具のベニヤをすべてはがして張り替えさせられたという経験もあります。
ですから単純に「練り付けベニヤ」だから良いとは言えないということです。

そこでメラミンの仕上げは汚いのかという話になるのですが、
「技術力でカバーできる範囲」だというのが結論です。

ただ今では木口用のメラミンも出てきており
種類がまだまだ少ないのですが将来的には増えていくものと期待しているところです。

ホテルや美術館やジュエリーショップの什器もメラミンを採用している

「練り付けベニヤ」の元になる木材は森林保護の観点から年々使われなくなっており
今やホテルや美術館やジュエリーショップの什器までもがメラミンを採用しています。

ご自分のお好みの形にすることができます

フローテレビボードは基本となる形を集めて価格表を作っていますが、
それはあくまでも価格の目安としてもらいたいからです。

それに完全オーダーといっても参考にする形がなければ
発想さえできません。

自分が「こんなテレビボードが欲しい」と思ったらスケッチをこちらに送ってください。

それを見て実現可能かどうかを判断して設計図を書かせていただきます。

もちろんアドバイスもさせていただきます。

施工マニュアルをお渡しします

ハウスメーカーや工務店様が施工しやすいように
施工マニュアルをお渡ししています。

難しい部分は動画解説も付けていますので施工の時にスマホで動画を見ながら
施工すると良いでしょう。

フロートテレビボードの価格表はオープンにはしていません

フロートテレビボードを販売するときにまず考えたことは
いたずらに価格のみで評価されたくないということでした。

そのために価格表もオープンにはしていません。

なぜなら、家具は仕様により価格は高くも安くもなるからです。

例として同じ材料を使ったとしてもディテールによって難易度が変わります。

つまり難しくなればなるほど作れる職人さんが限られるということです。

私の開発したフロートテレビボードはまさにそれを狙って
あえて難しいディテールにしています。

といいますか、デザインに妥協したくないので難しいディテールにせざるを
得なかったというのが正直なところです。

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この記事を書いた人

【フロートテレビボード開発者】
2004年にフロートテレビボードを開発した家具デザイナー
従来のテレビボードの欠点を解消するために、テレビボードを浮かせて配線を収納する構造を考案
ハウスメーカーや設計事務所などから多くのオーダー家具の依頼を受けている
住宅の設計担当者やインテリアコーディネーターの講師も務めている

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