フロートテレビボードを安くできなかった理由

フロートテレビボードを安くできなかった理由は五つもあります。
第一に構造に問題があったら安全を脅かすからです。
そしてサイズを統一すると設置できる家が限られてしまうからです。
その他、流通と製造原価のしくみも明かしています。

目次

一番の理由は構造に影響が出るから

一番の理由は構造に影響が出るからです。

そして壁に取り付けするためかんたんに取り替えることができないからです。

フロートテレビボードの懸念材料は
浮かせているため真ん中に荷重がかかると
落下しないまでも家具の真ん中が下がってくることです。

そして厄介なのが、

その現象が半年後や一年後に現れてくることです。

そしてその現象は家具の構造によって程度が変わってきます。

家具製造において価格を抑える方法はいくつかあります。

もっとも多いものは
仕上げの建材と思うでしょうけど違います。

実はもっとも多いのが構造を支える芯の素材です。

家具工場では芯材と呼びます。

この芯材の元となる材料の違い、
そして厚さの違いが家具全体の強度に関わってくるのです。

そしてそれは表に出ない部分なので
決して見られることはありません。

多少詳しい人は家具の裏を見たり、
家具をポンポン叩いたりしてその構造を見破れます。

ここではっきりと言えることは

価格を低くすることは芯材のグレードを下げなればできないということです。

置いて使う家具であれば多少のグラつきで済むかも知れませんが、

フロート、つまり床から浮かせるということは
構造そのものに無理がかかるということです。

現在家具の大半はフラッシュ構造となっているため
そもそも耐久性の点で疑問です。

といいますか欠点を知っているのでフラッシュ構造にはできなかったのです。

二番目の理由は形とサイズを統一できなかったから

ものづくりは、

数がまとまると安くできるというのは常識です。

システムキッチンはまさにそれで
定形のキャビネットを組み合わせるだけでできてしまいます。

ところが
テレビボードとなると

設置する場所が定まらないため
サイズを固定すると設置できる家が限られてしまいます。

例として
標準の1800サイズとした場合、

1820芯々の壁の両側に袖壁があった場合は1700になるので
入らなくなるということです。

さらにあと1センチ大きくすると持っているレコーダーが入るのに。

とか

内部の有効高さもあと1センチあったらゲーム機が入るのに。

さらに

アンプを入れるので大きな通気孔が欲しいなどと

使う人によって要望が多いためサイズを統一することはできなかったのです。

三番目の理由はカラーを絞りきれなかったから

ハウスメーカーのモデルハウスの家具の打ち合わせは
設計担当者とインテリアコーディネーターを交えて行いますが

家具は家のデザインコンセプトに沿う素材とカラーが求められます。

お客様が目にするので一番大切だといっても過言ではありません。

ですから

設計担当者とインテリアコーディネーターに納得してもらうために

カラーは900以上、ほかの建材メーカーからも取り寄せできるので
その倍以上から選べるようにしたからです。

さらに

材質も無垢材以外は指定可能としているので、

いわゆる練り付けベニヤ、塗装仕上げにも対応しています。

四番目の理由はどんな家にでも取付可能としたから

量産化するということは

もっとも需要の多い寸法で作ることになるので

それに合わない環境下のお客様にはあきらめてもらうということです。

私がオーダー家具屋になった理由は、

どんな場所にでも望む家具を設置してあげたいというものだったので

量産化は無理だと結論を出すのに時間はかかりませんでした。

流通と製造原価のしくみ

家具の販売は家具ショップやハウスメーカーに紹介されることで
広く流通されますが、

それは
製造元がその分の経費を製造原価に上乗せしていることを意味します。

例を上げると

定価が100万円のキッチンは

代理店に50パーセントの50万円で卸すとしたら

キッチンを3割引の70万円で販売したとしても
20万円の利益が出ます。

では製造側は
20万円の利益を得ようとすると

製造原価を30パーセントに抑えなければならないということです。

ですから製造原価は定価の三分の一程度という目安が立つのです。

一方、

流通を通さずお客様に直接販売している
カワジリデザインの製造原価は

軽く60パーセントを超えています。
つまり定価の三分の二程度ということになります。

単純計算しても

60パーセントと30パーセントでは倍の違いがあるということです。

キッチンは100万円としましたが

テレビボードとして30万円とした場合は

60パーセントとすれば18万円、

30パーセントとすれば10万円になるのですから

製造原価は
ほぼ倍の違いが生ずるということです。

ですから

経費をお客様に負担させたくないということから
直接販売としています。

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この記事を書いた人

【フロートテレビボード開発者】
2004年にフロートテレビボードを開発した家具デザイナー
従来のテレビボードの欠点を解消するために、テレビボードを浮かせて配線を収納する構造を考案
ハウスメーカーや設計事務所などから多くのオーダー家具の依頼を受けている
住宅の設計担当者やインテリアコーディネーターの講師も務めている

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